改正私立学校法~理事の解任手続き

理事の解任手続き条文

理事の解任手続き条文については令和7年4月1日施行の私立学校法の第三十三条にある。

第三十三条 理事選任機関は、理事が次の各号のいずれかに該当するときは、寄附行為をもつて定めるところにより、当該理事を解任することができる。
一 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つたとき。
二 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。
三 その他寄附行為をもつて定める事由があるとき。
2 理事が前項各号のいずれかに該当するときは、評議員会は、当該理事の解任を理事選任機関に求めることができる。
3 前項の場合において、理事の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があつたにもかかわらず、当該理事の解任を求める旨の議案が評議員会において否決されたとき、又は当該理事の解任を求める旨の評議員会の決議があつた日から二週間以内に理事選任機関による解任がされなかつたときは、評議員は、当該議案が否決された日又は当該決議があつた日から二週間を経過した日から三十日以内に、当該理事の解任を請求する訴えを提起することができる。

理事選任機関

理事選任機関については令和7年4月1日施行の私立学校法の第二十九条にある。

第二十九条 理事選任機関の構成、運営その他理事選任機関に関し必要な事項は、寄附行為をもつて定める。

上記の必要な事項については「寄附行為作成例(文部科学大臣所轄学校法人向け)(令和6年3月5日大学設置・学校法人審議会(学校法人分科会)決定」等に出ている以下のような事項だと思われます。
【●●学校法人の寄附行為】
(理事選任機関)
第〇条 この法人の理事選任機関は、評議員会とする。
2 理事選任機関の構成員は、全ての評議員とする。
3 監事は、理事選任機関に対し必要な報告を行おうとするときは、理事長に対し、理事選任機関の招集を請求することができる。この場合において、理事 
長は、理事選任機関を招集しなければならない。
以上は、あくまで一例で、理事選任機関の構成及び運営の具体的内容の決定は、学校法人の判断に委ねられていますが、理事選任機関の構成及び運営、監事からの報告の方法等は、寄附行為に必ず規定しなければならないことに留意する必要があります。

寄附行為をもつて定めるところにより(第三十三条第1項)

第三十三条第1項の「寄附行為をもつて定めるところにより」とは、文部科学省が出している「寄附行為作成例(文部科学大臣所轄学校法人向け)(令和6年3月5日大学設置・学校法人審議会(学校法人分科会)決定) 」より例えば、以下と思われる。

第十一条 理事が次の各号のいずれかに該当するときは、当該理事を選任した理事選任機関の決議によって解任することができる。
一  職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき
二  心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき
三  理事としてふさわしくない非行があったとき
2 理事が前項各号のいずれかに該当し、理事の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくはこの寄附行為に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該理事の解任を求める旨の議案が評議員会において否決されたときは、評議員は、当該議案が否決された日から三十日以内に、訴えをもって当該理事の解任を請求することができる。
上記は、理事選任機関が評議員会のみの場合を想定している。

理事の解任を請求する訴え(第三十三条第3項)

「理事の解任を請求する訴え」については私立学校法第三十五条により、一般社団・財団法人法第二百八十五条及び第二百八十六条の規定が適用され、主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所に訴えを提起することになる。第二十一条より主たる事務所の所在地とは学校法人の住所となる。

まとめ

解任については、理事選任機関によって第三十三条第1項に該当し、寄附行為をもつて定めるところにより解任される。
解任に当てはまる場合で、理事選任機関によって解任されない場合、理事の解任を理事選任機関に求めることができる。
それでも解任されない場合、評議員自身が、解任の訴えを主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所に訴えを提起することができる。